概要
現在の組織分析において主流となっている2次元による切片組織の分析手法は、組織の微小環境について空間的に解析を行う場合や、形態学的な分析はかなり限られた情報しか得られません。また、従来法では何百ものスライドを処理しなくてはならないことや、複雑な生物学的プロセスを理解する上で、組織を少量しかサンプリングできない場合など、様々な問題点がありました。
本サービスは、これらの問題点を解決するため、LifeCanvas社独自のCLARITY法を利用した組織透明化技術とサンプル処理法を組み合わせて3D空間イメージングを実施することができます。
特長
- SHIELD(組織保存法)
LifeCanvas社で独自に開発されたSHIELD法*1は、生物学的組織の標準的な PFA固定を補完および強化する組織保存技術です。エポキシド分子が組織内に拡散し架橋することで、物理的および化学的なストレス要因から、内因性蛍光分子やタンパク質、核酸および、全体的な組織構造を固定し、強固な骨格が形成されます。このSHIELDの組織保存法は複数回の蛍光タンパク質および抗体標識によるイメージング解析に影響なく保護することが可能です。
*1.Protection of tissue physicochemical properties using polyfunctional crosslinkers. Nature Biotechnology (2019) 37: 73-83
- Clear+(組織透明化)
CLARITY テクノロジー(Clear Lipid-exchanged Acrylamide-hybridized Rigid Imaging / Immunostaining / in situ-hybridization-compatible TissuehYdrogel)は、2013年にNatureに掲載された論文で初めて公開された技術*2です。組織に含まれる脂質は、顕微鏡解析時に光を散乱してしまい、画質が不明瞭になる原因となっています。そのため、光学的な顕微鏡解析において、脂質による不透明度を解決することが解析結果を左右するカギとなります。
LifeCanvas社ではこの技術を利用した透明化技術である「Clear+」システム*3 を開発し、サンプルの形態や構造的な影響を最小限に抑えてサンプルを脱脂し、光学的に透明化することで、機械的な強度や分子の安定性、三次元構造を保持したまま解析を行うことが可能です。
*2.Structural and molecular interrogation of intact biological systems. Nature (2013) 497: 332-337.
*3.CLARITY for mapping the nervous system. Nature Methods (2013) 10: 508-513.
- SWITCH(抗体標識制御)
SWITCH法は大きな動物やヒトの組織サンプルの処理中に生じる様々な化学反応を効率的に制御するためのシステム*4です。この技術は主に2つの手順からなり、化学物質とバッファーが組織全体を自由に拡散できる状態にすることで、化学反応を抑制させるステップ(SWITCH-OFF)と、バッファー環境を化学反応が可能な状態まで急激に変化させるステップ(SWITCH-ON)を切り替えることで、組織表面から内部構造へ均一な免疫染色を行うことができる上、構造や生体分子、抗原性などを保持した状態を維持することが可能なため、多重化イメージングのために20回程度までの再標識を可能にしています。(fig.1)
*4.Simple, Scalable Proteomic Imaging for High-Dimensional Profiling of Intact Systems. Cell (2015) 163(6): 1500-1514.
- Stochastic electrotransport(分子輸送)
確率的電気輸送(Stochastic electrotransport; SE)は、多孔質サンプルを迅速かつインタクトに組織サンプルを処理することができるLifeCanvas社の特許技術*5 です。脱脂や免疫染色などの処理工程は、従来、マウスの脳組織など大きなサンプルをインタクトに処理する場合、抗体を組織表面から内部へ浸透させ標識させるのに時間がかかる場合が多く、制限がありましたが、このSE法は回転電場を使用することで、組織内の帯電した構造に損傷を与えることなく、多孔質サンプル全体に電気移動性の高い分子(抗体や界面活性剤ミセルなど)を拡散させることが可能です。これによって大きなサイズの組織サンプルも短時間で効率的に脱脂でき、核やタンパク質の染色、および抗体染色において高い均一性を実現しています。上記のSWITCH法と組み合わせることでiDISCO法やCUBIC法よりも短時間な均一性を実現しています。
*5.Stochastic electrotransport selectively enhances the transport of highly electromobile molecules. PNAS (2015) 112 (46): E6274-E6283
- eFLASH(組織免疫染色)
短時間で組織サンプルを均一に染色することができる高速組織標識技術がeFLASH*6 です。この方法は上記のSE法と抗体の結合親和性の反応条件の調節を組み合わせることで、組織サンプルの表面で飽和することなく組織内部まで浸透させ、均一な染色を実現しています。はじめは、高pHと高デオキシコール酸ナトリウム(Sodium Deoxycholate;NaDC)濃度により、抗体の結合が妨げられていますが、実験中に、pHとNADC濃度を徐々に低下させていくことで抗体の親和性が徐々に高まり、最終的にpHは中和され、NADC濃度が低くなることで、抗体がサンプル全体に均一に結合します。(fig.2)
*6.Ultrafast immunostaining of organ-scale tissues for scalable proteomic phenotyping. bioRxiv (2019)
- SmartAnalytics(3D データ解析)
独自のソフトウェアであるSmartAnalyticsを利用し、SmartSPIMライトシート顕微鏡(LifeCanvas社製)から取得したテラバイトサイズの3Dイメージングデータから解析を行うことが可能です。マウスの脳組織において取得した3Dイメージングデータについて、データベースとなるAllen Brain Atlasへの正確に位置合わせを行うことで、非常に粒度の細かい脳領域の正確な細胞数と蛍光強度の局在を解析できるため、複数サンプルを処理することで統計的優位性試験を実現し、ヒートマップを作成することが可能です。(fig.3)
解析のアプリケーション
本サービスでは、解析のアプリケーションとしてc-Foによる神経活動マッピング、アミロイドβ定性化、内因性蛍光マッピングの3タイプをご用意しています。その他、カスタムでのイメージング解析も可能ですが、カスタムの場合は生物種や組織タイプの種類などにより、ご対応できる場合とできない場合がございます。詳しくはお問合せください。
解析のワークフロー
本サービスは、以下の手順で解析を実施いたします。(
fig.4)本サービスは、サンプル処理からデータ解析までフルパッケージのサービスとなっております。なお、解析で使用されている製品は、全て LifeCanvas社が独自に開発、製造、特許取得した製品を使用しています。
これらの製品は購入も可能です。
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