概要
核の単離は、10X Genomics Chromium チップによって行われます。このシステム内では、バーコード、プライマー、酵素、および単一の核を組み込んだゲルビーズがナノリットルサイズの油滴に封入され、ゲルビーズインエマルジョン(GEM:Gel Beads-in-Emulsion)を形成します。GEM 形成後、核 GEM 内で細胞溶解とバーコードの放出が起こります。その後、mRNA 分子は逆転写を受け cDNA となり、10X バーコードとユニーク分子識別子(UMI:Unique Molecular Identifiers)が組み込まれます。これらの cDNA はその後、標準的なシークエンシングライブラリ構築に用いられ、シングルセルレベルでの遺伝子発現プロファイルの堅牢かつ包括的な探索を容易にします。(
fig.1)(
fig.2)
- 解像度:100μM 凍結組織からのシングル核懸濁液の調製
- GEM(Gel Bead-in-Emulsion)の形成および cDNA 合成
- GEMの各ビーズには、以下の4つのセクションで構成されるプライマーを搭載
-mRNA プライミングおよび cDNA 合成のための poly(dT) テール
-増幅バイアスを補正するための Unique Molecular Identifier (UMI)
-10Xバーコード
-部分的な Read 1 のシークエンシングプライマーの結合配列
特長
シングル核 RNA シークエンスは、シングルセル RNA シークエンスの制限を回避し、以下を可能とします。
- 新鮮なサンプルだけでなく、凍結サンプルでも使用可能
- 新鮮細胞の酵素処理と比較し、凍結細胞はストレスが少ないため、ストレス誘導性遺伝子の低減がデータに反映される。
- 赤血球を事前に除去する必要なし
- 細胞直径に制限なし
- 組織からの細胞分散時に細胞が凝集しやすい、あるいはダメージを受けやすい複雑な組織サンプルにも適応できる場合が多い。
scRNA-seq は非対応、snRNA-seq では対応可能なサンプル
細胞/組織 |
シングルセル解析で非対応な理由 |
新鮮ではない凍結組織 |
新鮮な組織にのみ対応(snRNA-seq は凍結および長期保存組織にも対応) |
筋細胞、巨核球、脂肪 |
細胞径が大きく、機器に入らないため |
肝臓 |
壊れやすく、単一細胞を区別できない。 |
神経細胞、脳 |
感受性が高く、ストレスがかかりやすいため、シークエンス結果に影響を与える可能性がある。 |
膵臓、甲状腺 |
内因性酵素が豊富で、単一細胞懸濁液の生産に影響する。 |
シングル核 vs シングルセル
シングル核 |
シングルセル |
細胞径に制限がない |
細胞径:10~40μm |
凍結組織にも対応 |
新鮮な組織にのみ対応(凍結組織は非対応) |
凍結細胞に対して低ストレス |
酵素処理により、細胞にストレス反応が起こる可能性がある。 |
赤血球の除去は不要 |
赤血球の除去が必要 |
核は生体情報を表す |
細胞全体が生体情報を表す |
サービスの仕様
必要サンプル条件 |
細胞数:合計 1x106 以上、または 5x105 以上のフローソート細胞
組織:200 mg 以上
全血:4 mL以上 |
ライブラリー |
10x Genomics sn cDNA library |
シークエンス条件 |
illumina PE150 |
推奨データ量 |
細胞あたり 100K PE reads (100~200 Gb) |
サンプルQC |
700~1200 核/μL、顕微鏡下で核の完全性を観察 |
バイオインフォマティクス解析
バイオインフォマティクス解析には、下記解析が含まれています。(
fig.4)
- 品質管理
細胞数、遺伝子検出、細胞の正確な同定、RNA 分子と発現の定量
- サンプル内分析
細胞クラスタリングおよびクラスターアノテーション
発現差解析:クラスター間での DEG 同定
クラスターDEG の機能アノテーションとエンリッチメント
- グループ間分析
データの組み合わせ
発現差解析:グループ間での DEG 同定
グループ DEG の機能アノテーションとエンリッチメント
- 高度解析(有償オプション)
細胞周期解析
擬似時間解析
細胞コミュニケーション解析(CellPhoneDB)
遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)
解析結果例
サンプル内分析(
fig.5)(
fig.6)
グループ間分析(
fig.7)
高度解析(
fig.8)(
fig.9)